憲法と法律の違い

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憲法と法律の違い

 

公務員試験の時に勉強した科目を紹介するシリーズ。

 

国際法を1通り解説してきました。

 

今回から日本国憲法を解説しようかと。

 

 

憲法は法律じゃない

 

そもそも憲法とは何でしょうか?

 

所謂 ‘6法’ の1つで、民法や刑法等と同じく法学部の主要科目の1つです。

 

「××法って名前だし、法律の1つかな」って思いますよね。

 

ですが、憲法は法律じゃありません。

 

お恥ずかしい話、私も憲法を勉強して1年間は「憲法という法律がある」と思っていました(汗)

 

先輩から指摘を受けて「へっ!?」ってなった記憶あります。

 

恥ずかしい…

 

法律じゃないなら、憲法とは何者でしょうか?

 

世の中には色んな法規範があります。

 

法律とか、条例とか…

 

憲法は、法律や条例等とも違う、独自の法規範です。

 

憲法は、「憲法」という法なんです。

 

これは基礎中の基礎ですが、基礎すぎて誰も教えてくれないんですね…

 

私の様な恥ずかしい体験をしない為にも、憲法は法律じゃない、独自の法規範であるというのは抑えておいて下さい!

 

 

憲法と法律の関係

 

先程も書きましたが、世の中には色んな法規範があります。

 

憲法、法律、条例、命令、…

 

この色んな法ですが、バラバラに存在してるのではなく、

上下関係があります。

 

1番偉いのが憲法、

2番目が法律や条例、

3番目が命令、

の様な感じ。

 

憲法は、全ての国内法の頂点に君臨します。

 

国内法で1番偉いんですね。

 

法律も、条例も、命令も、憲法よりも立場が下。

 

法律にしろ、条例にしろ、憲法に適合する様に書かれてなければなりません。

 

法律が、国家権力が国民に対し示す法なのに対し、

憲法は、国民が国家権力に対し示す法なのです。

 

「この範囲でなら俺らを縛ってもいいぞ」ってね。

 

だから憲法と法律って、ベクトルが全然違うんですね。

 

ほら、「違憲立法審査権」ってあったでしょ!?

 

中高の公民で習った筈ですが、

あれは法律が憲法に適合するか審査する権利です。

 

憲法に照らして合憲か違憲か判断するという事は、

憲法が法律より格上だという事を示してるんです。

 

本当は公民を勉強した時点で憲法と法律が別物であるのに気づけたんですが、

大学で憲法を勉強して2年目になるまで流してしまっていました。

 

お恥ずかしい…

 

違憲立法審査権がある様に、あらゆる国内法は、憲法の範囲内でしか書けません。

 

なので憲法というのは、決りの為の決り、といえるでしょう。

 

 

憲法の種類

 

世界各国が採用してる憲法ですが、中に幾つか種類があるので紹介しておきます。

 

形式的意味の憲法

 

「憲法」って名前でよばれてる法規範です。

 

普通は「日本国 ‘憲法’ 」みたいに、××憲法っていうのがあるもんなんですが、

何と立憲主義の母国とされる英国には「憲法」ってよばれる法規範がないんです。

 

英国では、憲法の要素が色んな法にちらばっています。

 

例えば「権利の章典」とか。

 

世界史で習った権利の章典が未だ存在するだけでも十分意外ですが。

 

こういう風に、「○○憲法」というのが存在せず、色んな法に憲法の要素が散りばめられた憲法を「不文憲法」又は「不成典憲法」といいます。

 

実質的意味の憲法

 

実質的意味の憲法には、更に「固有の意味の憲法」と「立憲的意味の憲法」にわかれます。

 

固有の意味の憲法

 

国家統治の基本になる法です。

 

その点だけに着目するんであれば、奈良時代の大宝律令も憲法的な性格をもっています。

 

立憲的意味の憲法

 

国家権力を制限し、国民の人権を守る憲法です。

 

今の日本国憲法がそうです。

 

最も近代的な憲法ですね。

 

硬性憲法

 

一言でいうなら、変え難い憲法です。

 

どう変え難いかというと、普通の法律とは違った面倒な改正手続きがあります。

 

今の日本国憲法は、各院の総議員の2/3以上の賛成で発議し、国民投票で過半数の賛成でようやっと改正なので、

硬性憲法ですね。

 

軟性憲法

 

変え易い憲法です。

 

通常の法律と同じ手続きで改正できると、軟性憲法といえます。

 

民定憲法

 

国民が自分達で作った憲法です。

 

欽定憲法

 

王様とかが与えて下すった憲法です。

 

‘欽’ の字には王様とか、そういう意味があります。

 

 

憲法の構造

 

憲法の最大の目的は個人の尊厳を守る事です。

 

その為に憲法の条文は、大きく「人権」と「統治」にわけられて書かれています。

 

人権が十条~40条、

統治が1条~9条と41条~131条。

 

「人権」というのは、その名の通り、人権を守る規定です。

 

「統治」というのは、国家権力を縛る為の規定です。

 

なぜ国家権力を縛るのかというと、歴史を見れば、国家権力が人権侵害する事が多々あったから。

 

王様が悪政を働いて国民を虐める、なんてしない様に、国家権力を統治で縛るのです。

 

法学部では大体、人権で2~4単位、

統治でも大体2~4単位です。

 

公務員試験でも人権と統治の比重は同じです。

 

憲法という大枠の中に、人権という科目と、統治という科目がある、とお考え頂ければいいでしょう。

 

 

権力性の契機と、正当性の契機

 

憲法の3大原理、国民主権ですが、2つの側面があります。

 

権力性の契機と、正当性の契機です。

 

権力性の契機とは、国の政治の在り方を最終的に決める力を国民が行使する事で、

正当性の契機とは、国家権力の行使を正当づける究極の権威が国民にある事です。

 

権力性の契機は、国民自身が政治に積極的に関与しようとしますので、直接民主制に親和性があります。

 

対して、正当性の契機は、権威は国民にあるけれども、実際の権力の行使は国民の代表者、詰り国会議員がすると考えるので、間接民主制に親和性があります。

 

日本国憲法はどっちを予定してるのかというと、

確かに直接民主制を条文で明記してるのもあります。

 

1.憲法改正の国民投票

2.最高裁判所の国民審査

3.1つの地方自治体にのみ適用される法律への住民投票

 

上記1、2、3は憲法が予定してる直接民主制ですが、これらは例外的で、

日本国憲法の基本は間接民主制です。

 

理由ですが、

1つ目に、憲法全文に、「日本国民は、国会に於る代表者を通じて行動し」とあるので、条文上直接的な行動は予定してないと考えられます。

 

2つ目に、1億人もいる今の日本の人口規模で、直接民主は物理的に不可能です。

 

3つ目に、プレビジットといって、自分達で政治をしようとするよりも、強力な指導者に政治をお任せしてしまう可能性があるとされます。

 

確かに歴史をみれば、仏国のナポレオンや、独国のヒトラーの様に、民主的に独裁者が選ばれる例は存在します。

 

憲法としては、そういう独裁者の誕生は避けたいのですね。

 

ここで注目すべきは、3つ目です。

 

プレビシットを懸念するのは、ある側面では国民を疑ってるんです。

 

「直接民主させたって、どうせ自分達で政治せずに、強力な指導者に丸投げするんでしょ」

と思ってるのですから、意外にも国民を何の気もなしに信じる程、憲法は ‘お人好し’ じゃないんですね。

 

 

法の支配と法治主義

 

法治主義とは、議会が定めた法律によって政治が行われる事です。

 

普通だと思いますよね。

 

但し法治主義には欠点があって、

議会が定めた法律ならどんな法律でも従わなければならない。

別の言い方をするなら、’悪法も法なり’ になっちゃうのです。

 

そこで登場したのが「法の支配」です。

 

法の支配には、法律の正しさを担保する制度が存在します。

 

先程も書いたが、日本国憲法には違憲立法審査権があり、

国民の代表者である国会が作った法律であっても、裁判所によって違憲とされてしまうのです。

 

法の支配は、法治主義を正す、場合によっては潰すという点で、法治主義とは全く別物です。

 

ここでも考えてほしいのは、法の支配は、議会が作った法律という、最も民主的な筈のものを正すという点です。

 

民主主義も間違えるという前提にたってるんですね。

 

ここでも憲法は、民主主義というか、国民というかを全て信用してる訳ではないのが分ります。

 

意外と憲法は国民や民主主義を信用しないのですね。

 

 

保障、禁止、許容

 

憲法には、「××しなさい」という「保障」という領域が書かれています。

 

人権 ‘保障’ とかね。

 

一方で、「××するな」という「禁止」という領域も書かれています。

 

奴隷的拘束の ‘禁止’ とかね。

 

なるほど、それはそうかもしれませんが、

逆にいうと、憲法に書かれてある域は「保障」と「禁止」だけです。

 

何がいいたいかというと、

憲法に書かれてない領域があるという事です。

 

その域こそ「許容」!

 

この許容という範囲が非常に重要で、

許容の範囲こそ、議会制民主主義の裁量の領域なのです。

 

許容の範囲内で、議会制民主主義が法律を使って、法律上の保障を与えたり禁止したりします。

 

なので、ややこしいですが、

法律上、保障や禁止になってたとしても、それはあくまで法律が決めたのであって、憲法上は許容なのです。

 

そして、憲法上の保障や禁止の領域は、議会制民主主義では触れてはいけない領域なのです。

 

憲法が民主主義に示す態度は、

許容の様に民主主義の自由を許すものから、

保障や禁止の様に、民主主義の介入を許さないものもあるんですね。

 

憲法が民主主義を縛るって意外ですね!

 

 

終りに

 

如何でしたか?

 

今回は日本国憲法について書きました。

 

個人的に大きな発見だったのは、

1.憲法と法律は別物だという事

2.憲法は国民を両手をあげては信用していない事

3.憲法が民主主義に示す態度には保障、禁止、許容の3つがあり、保障•禁止の領域では民主主義ではいじれない事

です。

 

憲法と法律が別物である事は、知っておくと恥ずかしくないのでぜひ!

 

保障•禁止•許容については、いずれ憲法を解く上で非常に重要になってきますので、

少なくとも概略ぐらいは抑えておいて下さい!

 

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