普段、日本で住んでるだけでは、国籍を意識する機会はなかなかないでしょう。
国内でいるだけでは、空気の如く当り前の存在ですから。
ですが国際法の世界では、国籍も又、1つの論点です。
今回は、国際法上の国籍について解説します。
国籍とは
まずは国籍の定義を確認しましょう。
国籍とは
「特定の国に所属する為の法的な絆」
と定義されます。
あくまでも法的なものであって、
個人的な忠誠心とかではダメです。
国籍を得る•失う
国籍を与える基準は、その国の裁量です。
国籍取得ですが、
生まれたら与えられるパターンと、
そうでないパターンがあります。
生まれて得られるパターンですが、
1.親の国籍が与えられる
2.誕生した国の国籍が与えられる
の、更に2パターンにわけられます。
日本は1、米国は2です。
日本人は、どこの国で生まれようと、親が日本人なら日本人です。
一方、米国では、親が何人だろうと、米国で生まれた以上、米国人です。
生まれた以外で国籍が与えられるのは、
帰化、自動的従属があります。
帰化は分り易いですね。
有名人、特にサッカー選手で、元は外国人の人が日本国籍を取得する例があります。
自動的従属とは、結婚とか養子縁組で国籍を取得します。
結婚したら苗字が変わる感じでしょうか。
余り有名ではないですが、
習ったので一応書いときます。
国籍を得るなら、失う時もあります。
多いのは外国籍取得で、元の国の国籍を放棄する場合。
後は、重国籍になった場合、一方の国籍を放棄する事もありえます。
先程、日本と米国との違いを書きましたが、
じゃあ日本人の両親が米国で子供を産んだらどっちの国籍を取得するんでしょうか?
答えは両方です。
「どっちの国籍も取得していいの?」と思うかもしれませんが、
現実にはあり得る話です。
日本の国籍法では、22才になる前にどっちの国籍かを選ばなければならないらしいので、
最終的には国籍は1つになりますが、
少なくとも20年以上は重国籍が認められているんです。
真正の連関
国籍を与えるのはその国の自由ですが、
国籍には国籍国との実質的な結びつきが必要です。
国籍国との実質的な結びつきを「真正の連関」といいます。
ある判例を紹介します。
ノッテボーム事件という判例があります。
ノッテボームさんは人です。
ドイツ人です。
ドイツ人ですが、グアテマラで商売してました。
時は1930年代、
ドイツがポーランドに侵攻し、第2次世界大戦が始まります。
グアテマラとドイツは敵国同士になったそうです。
そこでノッテボームさんは、中立国リヒテンシュタインに行きます。
目的はリヒテンシュタイン国籍を取る為。
リヒテンシュタインは、少なくとも当時は、けっこう簡単に国籍を取れるらしいです。
で、リヒテンシュタイン人として、ノッテボームさんは、グアテマラで再び生活しようとします。
所がグアテマラは、
「ノッテボームはドイツ人だ。リヒテンシュタインなんて方便にすぎないじゃないか!」
として、グアテマラ内のノッテボームさんの財産を接収してしまいます。
そうすると今度はリヒテンシュタインが怒ります。
「うちの国民に何してくれてんだ💢」と。
そこで裁判になったんです。
判決は、
リヒテンシュタインの負け。
グアテマラの行為に対し、リヒテンシュタインは文句を言えない、と判示しました。
結局、リヒテンシュタイン国籍取得は方便にすぎないとみなされたんです。
こういうのは極めて稀な例で、普通は個人と国籍国との関係性が問題になる事はないし、問題そのものもないのですが、
方便で国籍を取ったり、或は多重国籍者が問題になる場合はあり得ます。
纏め
如何でしたか?
今回は国籍について、国際法の観点から書きました。
纏めると、
①
国籍とは
「特定の国に所属する為の法的な絆」
②
国籍を与えるのはその国の裁量であって、
国籍が被ったりする場合がある
③
国籍には国籍国との実質的な関係性である「真正の連関」が必要
です。
国籍なんて空気の様な存在で、日頃意識する事はないですが、
だからこそ問題が起こると厄介なんですね。
今回記事も、いつもながら話をややこしくしない為に端折って書いています。
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