国際法における主権
‘国’ って何だかとっても強そうですよね!?
企業や国民に対して強く出れるというか、支配的というか…
民間人から見たら、権力の塊にも映る…
但し、これはあくまで1国の中での話です。
国と国との関係で、ある国はある国に対し、どんな権限を持っているのでしょうか?
今回はそんな、国がもつ基本的な権利や義務についての記事です。
国は「主権」をもつ
国と国との関係で、各国には「主権」という権利があります。
主権ですが、2つの意味があって、
- 国内の統治や政治のあり方の最終決定権
- 対外的に自立できる権利
です。
国際社会の基本は「主権平等」です。
詰り
国内は完全に支配できるけど、
外国とはお互い対等
という関係です。
途上国が「ハンデをくれ!」といったり、
国連安全保障理事会の常任理事国の拒否権制度があったりしますが、
基本は大国も小国も ‘主権平等’ です。
‘領土保全’ といいつつ、他国の海には勝手に入れる…
自国の領土を他国に侵略されない権利です。
政治的に支配されないのも含みます。
武力による侵略は勿論、
勝手に立入られない権利も含みます。
が、慌てて注釈しなきゃいけないのは、
船に関しては例外があります。
それは、「無害通航権」といって、
‘無害’ ならば、船は他国の領海に勝手に入れるんです!!
何でこんなのがあるのか、全く分りませんが…
「無害」の基準は、基本は「通るだけ」です。
軍事活動は勿論、魚をとったりゴミをすてたりもダメ。
有害通航すると、
民間の船なら捕まって、船員は罰せられます。
対して、軍艦では、退去の要求しかできないんですね。
軍艦の方がよっぽど危ないだろうと思うんですが、その割には退去要求しかできないとは…
何でなのか、っていうのは、後程解説します。
只、どうしても、な時は、自衛権を発動して戦争するしかないかと…
軍艦が有害通航したら、後でにはなりますが、国家責任は追求できます。
慰め程度にしかならないでしょうが、
ないよりはましかと…
他国に首を突込むな
他国に余計な干渉してはならない義務を「不干渉義務」といいます。
国には、「国内管轄事項」といって、その国が自由に決めていい事項があるからです。
例えば、「政治経済選択の自由」といって、
どんな政治体制をとるのか、どんな経済体制をとるのか、はその国が自由に決めていいのです。
米国にいわれようが欧州にいわれようが、
自由主義経済や、民主主義を、よそから強制される筋合はないのです!
違法な干渉
残念ながら、よその国へ違法に首を突込む事例もあります。
昔は武力行使が違法な干渉の典型例とされました。
現代では、武力行使そのものが国際法違反とされましたので、
ここでいう ‘違法な干渉’ とは、武力行使以外の干渉をいいます。
他国の反政府団体に援助する、とかね。
逆に、違法な干渉に、なりそうでならないのが、
- 人工衛星での探査
- 経済的又は政治的強制
- 在外自国民救出活動
一応、衛星での探査では、何を見たか報告しなければならないらしいのですが、
宇宙利用は原則自由なので、止め様がないのです。
経済的•政治的強制とは、先進国が経済援助する際、その国の民主化を迫ったりするんです。
それが途上国としては嫌だというんですが、
経済支援 ‘しなければならない’ 国際法上の義務はありません。
在外自国民救出活動とは、あくまで自国民を救出するだけです。
(ハイジャックされた旅客機から自国民を救出する等)
武力を伴う作戦が実施されるのが多いですし、大体は外国で作戦が行われるので、
領土保全を侵害します。
それだけを見れば違法なんですが、
自国民を救出する為にやむを得ない最後の手段であるのが多く、
国連も国際司法裁判所も、違法性を追求しないのが多いです。
人道を理由とする干渉
幾ら干渉が違法になるからといって、
確かにその国の中で人権侵害が横行してる場合に、ほったらかしといていいのでしょうか?
「よくないよね」って考え方は昔からあるのですが、
‘人道的××’ の名目の下、しばしば乱用されてきた歴史があります。
そこで、「保護する責任」という概念が提唱されました。
「国は、人々を保護する責任があって、それが実行されてない時は、国際社会がそれを代行する」
というのです。
体制転覆を目的にしてはならないのですが、
実際にはリビア内戦の如く、体制転覆までやっちゃったりします。
国の中で酷い事が行われてたとして、外国がどこまで介入すべきかは、程度が難しい問題なのです。
国際組織による干渉
国連の様な国際組織も、国に対して干渉するのはあります。
どの程度まで介入できるかのさじ加減が難しいのは一緒ですが、
国際組織では、設立基本条約とかで「加盟国がこんな事したらこんな介入しますよ」って書いてたりします。
勿論、それでも揉めるのは多々ありますが、
同意の上、加盟してるのが一般的なので、只々 ‘人道上の理由’ だけよりかは争いがマシになったりします。
外国は裁判にかけれない
外国や外国の国家機関は、裁判にかける事ができません。
これを「主権免除」といいます。
裁判にかけれないんだから、法律を適用しても強制力がない点で無意味なので、
実質的に、国内法は、外国には無意味であるのを意味します。
主権免除は、政府や地方自治体等、あらゆる国家機関に適用されます。
大使館なんかも主権免除の対象ですね。
さっき無害通航権の章で、軍艦には退去要求しかできないと書きましたが、
それは軍艦も主権免除の対象だからです。
この主権免除ですが、何でもかんでも免除される「絶対免除主義」が、昔は主流でした。
時代がたつにつれ、免除されない事項もあるとする「制限免除主義」が主流になりました。
今日の国際慣習法では、制限免除主義が妥当してるとされます。
制限免除主義では、何が免除の対象になるかならないかは、
それが「主権的行為」か「業務管理的行為」かによる、とされます。
じゃあ何が「主権的行為」で何が「業務管理的行為」かというと、これがけっこう説が別れまして、
まちまちなんですね…
有力説は、民事に関する事(売買契約とか)は主権免除が及ばない、とします。
実際にはその国が制限免除主義について、どういう法律を作ってるか次第というのが、現在の国家実行の現実です。
纏め
如何でしたか!?
今回は国家の主権について書きました。
纏めると
①
主権とは、1国の意思決定の最高決定権という側面と、対外的に独立してるという2つの側面がある。
②
主権の1つとして、領土保全があるが、船については、外国の領海であっても通るだけなら勝手に通っていい。
③
よその国が他国の国内情勢に干渉してはならないが、人権侵害が横行してる等でしばしば干渉が問題になる。
④
「主権免除」といって、外国であるが故に裁判にかけられない事柄がある
でしょうか。
特に干渉については、人道との兼合いや程度問題があって、なかなか調整が難しいです。
今回も、例によってややこしくなりそうな箇所は端折りました。
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