法律が国境を飛び越える 国家管轄権をわかりやすく解説

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国家管轄権をわかりやすく解説

 

国には色々な権力があります。

 

大きくは司法権、立法権、行政権。

 

小さく分けると更に色々な権力があります。

 

これらの権力、1国で完結するなら楽です。

 

ですが、今日は国際社会である以上、これらの権力が外国との関係で問題になったりします。

 

そこで、法律が国境を飛越えるのがあるのか?

国家権力はどこまで及ぼせるのか?

今回はそんな記事を書きたく。

 

 

国家管轄権

 

国が持つ権力は、国際法的には「国家管轄権」といいます。

 

国家管轄権には更に、

司法管轄権、立法管轄権、執行管轄権

の3つがあります。

 

要するに3権を国際法風に言換えてます。

 

司法管轄権=裁判

立法管轄権=法律の適用

執行管轄権=行政

と考えると分り易いでしょうか!?

 

原則的にはこれらの権力は外国では適用できません。

 

特に執行管轄権の国外適用はダメ!

 

日本の警察は、日本の中でしか逮捕や捜査できないでしょ!

 

「へっ!? でも日本の警察だって海外へ行ったりするじゃん!」と思うかもしれませんが、

あれはきちんと外国政府から許可なり要請なりがあって、

ガサ入れが如く上からの権力の行使として踏込んでるんじゃないんです。

 

ここで有名な間違いを1つ。

 

ルパン3世に銭形警部という警察官が登場します。

 

彼は、ICPOの捜査官という立場で、ルパン3世の逮捕の為、あらゆる国で捜査します。

 

これ、執行管轄権の域外適用で、ダメです!!!

 

ICPOという組織は、情報共有や回覧といった仕事が主です。

 

特定国に乗込む権限まではありません。

 

なので、もしルパンを捕まえたいなら、ルパンが潜伏してる国、又は泥棒された国の警察が動くしかないのです。

 

銭形警部は執行管轄権の域外適用で違法なんです。

 

国際法の先生は、「夢を打ち砕いて申し訳ないが、銭形警部みたいな仕事はできません」と苦笑いしてました(汗)

 

但し、立法管轄権については、外国での適用も可能とされています。

 

立法管轄権って、法律を作るだけですから、例えば

「外国に住んでようと日本に税金を納めろ」法律を作った所で、

外国は止め様ないでしょ!

 

で、もし税金を納めなかったらどうなるか?

 

当然、日本の国税庁が外国に行って徴税する、なんてのはできません。

 

それをやっちゃうと「執行管轄権の域外適用」になっちゃうんで。

 

できるのといえば、

日本に帰ってきた時に追徴課税するとか、

日本で××をできなくする(例えば土地を買えなくする)、

とか位ですかね。

 

 

「うちの国が管轄権を持つんです」と主張するには

 

管轄権ですが、それがどこの国が持つのか問題になる場合があります。

 

単純な例ですが、

公海という、どこの国の海でもない海域があるのですが、

そこを航行中の日本の船の中で、米国人が犯罪に巻込まれた時とか。

 

そうなった時に、「うちの国に管轄権があります」と主張する為に、どういう論法をはればいいのでしょうか?

 

自国の管轄権を主張する理屈というか、考え方というかには、

大きく5つ、小さく8つの主義があります。

 

属地主義

 

自国の領域で行われたから「我が国に管轄権があります」と主張します。

 

本来これが1番単純な筈なんですが、

この属地主義、細かく4つの拡大解釈があります。

 

1.旗国主義

 

自国の船や飛行機等の乗り物の中で行われた事について、管轄権を主張します。

 

この主義では、日本の船や飛行機の中で行われた事は、その船や飛行機がどこにいても日本の法律が適用されます。

 

2.主観的属地主義

 

国内で開始→国外で完成 した犯罪に対し、開始時点の国が管轄権を持つという主義です。

 

2001年に北朝鮮の工作船が日本近海から逃亡し、中国の経済水域で沈没するという事件が発生しました。

 

こういう時に日本が管轄権を主張できる主義です。

 

3.客観的属地主義

 

国外で開始→国内で完成 した犯罪に対し主張されます。

 

外国で日本の偽札を作っても、その偽札は日本でしか使えませんから、

そら日本としてはこういう犯罪にも通貨偽造罪は適用したいですわな。

 

4.効果主義

 

国内に影響が及ぶからとの理由で管轄権を主張します。

 

国外で外国人がやった行為でもです。

 

属地主義の1つとされているんですが、

うぷ主が思うに、属地的な要素は何もないです。

 

突込んでもしょうがないのですが、

「どこが属地主義だ!?」って感じですね。

 

属人主義

 

外国にて、関係者が自国の人間だからと、管轄を認める主義です。

 

よくあるのは外国で重大犯罪した人間の国籍国が管轄権を主張します。

 

保護主義

 

特に重要な国家の権利を侵害する犯罪について、

どこで誰がやったかに関わらず、管轄権を主張します。

 

政治の基本を揺るがす、内乱罪とか、

或は

経済の基本を揺るがす、通貨偽造とか。

 

さっき偽札の例を書きましたが、

国内で使われずとも、海外で偽造されただけで文句を言いたい時には有効です。

 

但し、実際に外国に乗込むには、外国の許可がいるので、

有効になるかは外国の腹次第です。

 

消極的属人主義

 

被害者が自国民との理由で管轄権を主張します。

 

これって、外国の司法が信用できてないんですね。

 

だから自分の国で裁判したいから、こういう主張するんです。

 

相手国としても、自分達が信用されてないのが分るので、結構もめます。

 

普遍主義

 

条約上、又は国際慣習法上、「諸国の共通利益を害する犯罪」なる犯罪があるそうです。

 

この犯罪に当てはまれば、

それが条約上のものであれば各締約国、

国際慣習法上のものであれば全ての国

が、管轄権を持つとされます。

 

「共通の価値観があるだろう」って話でしょうかね。

 

 

管轄権が衝突したら

 

上記で管轄権を広く適用しようとすると、

当然、他国と揉める可能性はあります。

 

「うちが管轄権を持つんだ!」

「いや、うちだ!」

みたいにね。

 

そうなってくると調整が必要なんですが、

ではどうやって調整してるのでしょうか?

 

結論、適当です。

 

「なんじゃそりゃ!」って感じですが…

 

あれもこれも「うちが管轄権を持つ」と主張しすぎれば、

当然、国際社会からの信用を失いかねません。

 

そこで国際社会の空気を読んで、「あっ、ちょっとやりすぎたな」ってなったら、管轄権の主張を控える…

 

実際はこんな感じです。

 

例えば条約でここら辺をはっきりさせようとする取組みもあります。

 

が、大した合意に至ってない部分もままあります。

 

なので、管轄権が競合した際の調整については、

一般的な国際法は未完成といわざるをえません。

 

 

纏め

 

如何でしたか?

 

今回は国家管轄権について書きました。

 

纏めると、

 

国家管轄権には、司法、立法、執行(=行政)の各管轄権がある。

 

執行管轄権の域外適用はだめ(銭形警部はありえない)だが、

立法管轄権の域外適用はある

 

立法管轄権の域外適用には、

  • 属地主義(旗国主義、主観的属地主義、客観的属地主義、効果主義)
  • 属人主義(国籍主義)
  • 保護主義
  • 消極的属人主義
  • 普遍主義

の考え方がある

 

管轄権が競合した場合の国際法は定まってない

 

ですかね。

 

銭形警部は違法だっていうのは、知ってると酒の肴になるかもしれない豆知識ですね(笑)

 

YouTubeでは動画も公開しています。

 

例によって、ややこしくならない様に、内容を端折っています。

 

より詳しく解説してほしい。

その他質問やコメント等あれば、

以下動画からコメント願います。

 

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