国家承認とは 国を国として認める

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国家承認とは

 

皆さんは承認欲求はありますか?

 

うぷ主、我ながら恥ずかしいのですが、

承認欲求の塊でごさいまして(汗)

 

程度の差こそあれ、承認欲求は人間の大きな欲求の1つです。

 

そんな承認は、個人個人の営みにだけ存在するものではありません。

 

国と国との関係を規律する国際法にも、承認についての規定や論点があります。

 

国際法について書くシリーズ、

今回は国の承認について書きます。

 

 

承認とは

 

国際法に於て「承認」とは、

「新しい国家が成立した際、周りの国々が新しい国を国として認める」

事をいいます。

 

ざっくり書けばこれだけなんです。

 

が、これだけな筈の承認にも、色んな論点があります。

 

まず、承認は国家成立の要件か、という点。

 

周囲の国々の承認がないと国家を名乗れないのか?

はたまた誰からの承認がなくとも国家を名乗っていいのか?

 

承認なくして国家は成立せずという説を「創造的効果説」といい、

承認なくとも国家は成立するという説を「宣言的効果説」といいます。

 

今日では「宣言的効果説」の方が強いです。

 

というのも、現代国際法では、自決原則といって、自分達の事は自分達で決めるという原則があるので、

自分達の国を自分達が造った所で、よその国からヤイヤイいわれる筋合は基本的にないからです。

 

例えば北朝鮮という ‘国’ がありますが、

日本は実は、北朝鮮を国として承認していません。

 

ですが北朝鮮は一丁前に国として振舞っていますし、

中国やロシアは国として承認しています。

 

もし創造的効果説をとるなら、日本が国として承認してない以上、北朝鮮は国たりえないですが、

現実はそうなっていません。

 

故に創造的効果説は説得力が弱いのです。

 

難しいのは、かといって侵略戦争や集団虐殺を平気でする様な輩を国としてよいのか、という点。

 

中東で暴れ回ったイスラム国の様な。

 

こういう事態もあるので、創造的効果説は残される価値はあります。

 

まあ、実際の所は「我が国は新しい国です!」って言った際、周りの国がどれだけ承認するのかによりますので、

学問としてどうこう言うのは限界があると思いますが…

 

 

承認の要件

 

では何をもって「承認した」といえるのでしょうか?

 

それは、

まず新国家が国としての要件を揃えたか?

具体的には領土、住民、政府、外交能力を持ったか?

(これらを「客観的要件」といいます)

 

次に

国際法を守る積りがあるか?

(これを「主観的要件」といいます)

 

これらを備えると、承認が可能となります。

 

これらを備えてない内に承認すると、

「尚早の承認」といわれる事態になります。

 

「尚早の承認」なんて勿体ぶった言い方してますが、

やってる事は法的には外国の国内問題に違法に首つっこんだって事です。

 

要するに「内政干渉」ですね。

 

なので、「もう新しい国が完成したでしょ!」っていえる時期を見計らう必要があります。

 

承認は誰がするのかというと、

各国がします。

 

各国がばらばらにします。

 

承認を管理する国際機関がないんですね。

 

なので各国の裁量なんです。

 

さっき北朝鮮の例を出しましたが、

日本が未承認、中国ロシアが承認、となるのは承認が各国まちまちに行われるからなんです。

 

例えば、国連が新国家を承認する場面もあるでしょう。

 

じゃあ、国連加盟の各国も新国家を承認した扱いになるのかというと、

そうでもありません。

 

最終的には各国次第なのです。

 

一方で、新国家が国連に入った場合、承認しなかった国は、承認しなかったのをもって国連加盟を否定できません。

 

国連みたいな国際組織が新国家をどうするのかという事と、各国が新国家を承認するのは別次元で動いてるんですね。

 

 

不承認主義

 

幾ら承認が各国の裁量だからといって、「これは承認しちゃアカンでしょ!」ていうのはあります。

 

利権や人種差別の方便で造られた国とかですね。

 

例えば戦前の満州国は、実態は日本の操り国家でしたから、

国際連盟は満州国を国とは認めませんでした。

 

或は、南アフリカで、トランスカイ共和国という国が1963年に建国されました。

 

この国、実は南アフリカの黒人を押込める為の国で、

国連もすぐ南アフリカの真意を見抜きました。

 

なので、国連安全保障理事会は、トランスカイ共和国の不承認の決定をしました。

 

これら例から分るのは、

違法な武力行使や人種差別でできた国は不承認の対象になりうるのです。

 

そう考えると、

ウクライナ東部4州の独立をロシアが承認したのも大分怪しくなってきます。

 

違法に侵略した地域の独立の承認なんて、真面に考えて認められる筈がありません。

 

多くの国はこの地域の独立を承認してませんしね。

 

但し、違法な国家の全てが不承認される訳ではないので、

その点、実効性が問題視されています。

 

北朝鮮やミャンマーみたいに、国民を好き放題いじめてる国が、不承認されてるかというと、されてませんからね…

 

 

承認の種類

 

承認の分類ですが、

  • 意思表示の観点から見るか
  • 法的な確定性がら見るか

の2つの観点があります。

 

意思表示の観点から見ると、

  • 明示の承認
  • 黙示の承認

 

確定性の観点から見ると

  • 法律上の承認
  • 事実上の承認

 

が、それぞれあります。

 

「明示の承認」とは、

「承認」という言葉をはっきり使った承認です。

 

「黙示の承認」とは、

「承認」という言葉ははっきり使わないものの、承認したのを前提にした振舞い

(2国間で条約を結んだり、外交使節を受入れたり)

をするのをいいます。

 

「今更言う必要ないでしょ!?」って事でしょうか!?

 

黙示の承認も ‘承認’ である以上、

尚早の承認とか、違法なのはやっちゃいけませんよ!

 

ドネツク州の外交使節を受入れる、とかね。

 

注意しなければならないのは、

多国間条約とか、国際会議なんかは黙示の承認にはなりません。

 

日本も北朝鮮も国連に加盟しているので、国連に絡む条約を共通して締結してたりします。

 

或は国連の会議にお互い同席したりもします。

 

でも日本は北朝鮮を国とは認めていませんし、

その姿勢を貫けます。

 

そこまで個別の事情を気にしてたら、色んな国が集まってあれこれする、というのができないのでしょう。

 

「法律上の承認」とは、まあ普通の承認とお考え頂ければいいんじゃないでしょうか。

 

この承認、一旦すると撤回できませんのでご注意を。

 

「事実上の承認」は、これは曖昧な承認で、

新しく国ができたものの、まだ安定してない時とかに行われます。

 

「貴国の建国に祝意を表します」とかいっときながら、

「一刻も早く安定せられます様」とかいう、どうとでもとれるお祝いを述べたりします。

 

事実上の承認では、法律上の承認で認められる事ができません。

 

2国間条約を締結したり、外交使節の接受ができません。

 

これやってしまうと法律上の承認したと扱われてしまいます。

 

こんな中途半端な承認に意味あんのか!? とも思いますが、

そこまでしてでも新国家と関係を持ちたいという強い意志の表れです。

 

なので大体、後で法律上の承認に切替えるのが多い様です。

 

 

国家承認と政府承認

 

今まで書いてきたのは「国家承認」とよばれる承認です。

 

対して、政府承認というのもあります。

 

主に機能するのは、

同じ国の中で全く違う秩序の政府が新しくできた場合、

例えば江戸幕府が明治政府になるが如き、

どっちの政府を正とするかの場面です。

 

日本の場合、最終的には明治政府が勝ちましたが、

どっちが勝つかはっきりしない間、どっちも国際的に無責任では外国が困るでしょ。

 

だから外国としては

「我が国はこっちの政府を承認します。

だからお宅の政府は我が国に対してこういう責任をとってね🤍」

という必要があるんです。

 

政府承認されると、それまで結んでいた条約の権利義務は、承認された政府が引継ぎます。

 

「その条約は前の政府の責任なんで!」

は、だめです。

 

又、外国にある旧政府の財産(大使館とか)は、承認された政府に移ります。

 

政府承認では、その政府が国を代表する意志と力がないといけません。

 

意志も能力もない政府を承認すると、

やはり尚早の承認となってしまいます。

 

明示の承認、黙示の承認、法律上の承認、事実上の承認は、政府承認にもあります。

 

 

政府承認やめようぜ

 

政府承認ですが、「なくていいじゃん」という考え方があります。

 

「政府承認廃止論」とよばれます。

 

その国が安定してからの国家承認で十分だろうし、

承認なんかせずとも、程度に応じて外交すりゃいいじゃんか!

というのがその理由です。

 

現実、政府承認された後、新政府が国内で人権侵害とか大量虐殺とかやっちゃって、政府承認した国が ‘お墨付’ を与えちゃってるかの如き事例も見受けられます。

 

政府承認をやめる国も多々出てきてますが、

やめてない国もちょこちょこあるので、

廃止されてはないです。

 

因みに日本も政府承認を維持してますよ!

 

 

纏め

 

如何でしたか?

 

たかが承認にこれだけの論点があるんですね…

 

纏めると

 

承認とは、ある国が、ある国やある政府に対し、「あなた達を国や政府と認めます」という事

 

大きくわけて国家承認と政府承認があり、

更にそれらの中に明示の承認、黙示の承認、法律上の承認、事実上の承認、がそれぞれある。

 

承認は各国の裁量でまちまち。

故に

  • 甲国は乙国を国扱いしてるが、丙国は乙を国としては認めない
  • 国連に加盟し、国連がきちんと国扱いしてるA~Z国で、BとCは互いを国として認めていない

という事態が起こりうる。

 

きちんと体裁が整ってないにも関わらず承認すると、「尚早の承認」とよばれ、内政干渉として違法になる

 

この位を抑えとくと入門としては十二分でしょう。

 

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