条約法をわかりやすく解説

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条約法をわかりやすく解説

 

国際法の記事を書き始めてから、事ある毎に「条約」「条約」と使ってきました。

 

条約は国際法の基本中の基ですが、

今まで条約について真面に書いた事なかったですね。

 

実は条約は非常に論点多彩なので、

この際、条約について書きたく。

 

 

条約とは

 

今更ですが条約の定義を確認したく。

 

条約とは、

「国際法によって規律される国際法主体の文書の合意」

とされます。

 

国際法主体とは、国、又は国際組織です。

 

国際組織ですが、

「国際法主体とは 国際法は誰の為の法で、どんな登場人物がいるか」

でも書きましたが、

国々が集まった組織で、構成員は国でなければならなりません。

 

なので、国際NGO等は、一般常識としては国際組織ですが、

国際法が定義する ‘国際組織’ には当りませんので、ご注意を!

 

一口に「条約」といっていますが、

中で幾つか種類がありますので紹介します。

 

契約条約

 

主に2国間での約束を決める条約です。

 

契約みたいな条約だから「契約条約」。

 

立法条約

 

多数国で、国際社会のルールを決める条約です。

 

枠組み条約

 

ざっくりした内容だけ決める条約です。

 

細部は別に議定書とかで規定します。

 

設立基本条約

 

国際組織の設立を定めます。

 

会社でいう定款ですね。

 

国際レジームを定める条約

 

多数国間条約の内、今までの決議、積重ねを条約化したものです。環境とか人権とかですね。

 

条約の締結手続きですが、

 

1.まずは交渉して採択します。

 

2.次に代表者が署名します。

 

3.署名の後、本国で批准されます。

多数国条約の場合、国際機関に寄託されます。

 

1,2,3の手続きで発効します。

 

批准とは、主に議会が条約を承認する事です。

 

簡易な条約では、批准なしに発効するのもあります。

 

これらの手続きをへたものが条約です。

 

手続きを踏まなきゃいけないのは面倒ですが、

これらを満たせば名前は何だろうと条約です。

 

なので「~~条約」の他に議定書、協定、宣言、声明、憲章、等々の名前はありますが、手続きを満たしてる以上、条約ですし、

これらを満たせば、別に名前は「お•や•く•そ•く」とかでもいいのです。

 

そんなダサい名前つけないでしょうが(苦笑)

 

 

非法律的合意

 

「非拘束的合意」ともいいます。

 

議定書とか宣言とか、名前は条約と似た名前ですが、

法的拘束力がない点で条約と区別されます。

 

非法律的合意がある理由として、

1.政策当局者で流動的な状況に対処したい

2.議会承認を回避したい

という理由があります。

 

非法律的合意の例として、

「日朝平壌宣言」があります。

 

時の小泉首相と金正日総書記との間で結ばれました。

 

いかにも条約っぽいですが、

条約ではなく、非法律的合意です。

 

というのも日本として国会承認を得なければならなかったし、

仮に条約とすると、条約は国と国との約束なので、北朝鮮に黙示の国家承認を与えた事になりかねません。

 

そういう問題を回避する為に、非法律的合意が役立つのです。

 

 

留保

 

留保とは、

特定の規定を排除又は変更する事です。

 

「我が国はこの条文だけは入りません」

とか

「我が国はこの条文をこういう意味で運用します」

とか。

 

主に多数国条約で発生します。

 

そんなのいいのか、と思いますよね。

 

明確に留保を禁止してる条約もありますが、

留保の良し悪しを認定する客観的機関がないので、

最終的には各国の判断です。

 

多数国条約では、各国に同じ内容が適用されるべきとする「一体性の要請」と、

なるべく多くの国に参加してほしいとする「普遍性の要請」が働きます。

 

留保は、一体性の要請を多少損なっても、普遍性の要請を重視する為に認められます。

 

但し、どんな条項でも留保ができる訳ではなく、

条約の趣旨•目的を害さない範囲で認められます。

 

勿論、留保に対して異議を唱える事もできます。

 

明確に異議を申立てれば、異議国は留保国との間で条約発生を否定できます。

 

明示に異議を申立てない限り、留保は完全に有効なんですね。

 

 

解釈宣言

 

特定の条項で複数の解釈が可能な場合、自国が採用する解釈を表明する宣言を「解釈宣言」といいます。

 

留保と異なって、適用を排除•変更するものではないです。

 

が、「こういう解釈します」と語りつつ、実質的には意味を変更したり等、解釈宣言を語った留保が多いのも事実です。

 

最終的には紛争処理になる事もありえます。

 

 

効力の範囲

 

条約は基本的に、加盟国だけを拘束します。

 

加盟国は合意してその条約を締結してんだから、

当り前ですね。

 

もっとも、条約の内容が国際慣習法になってる場合、

国際慣習法は全世界を拘束するので、加盟国以外も拘束されます。

 

問題は関係ない第3国を規定してる場合です。

 

そんなのあるのかというと、例えばヤルタ協定。

 

米ソが千島列島がソ連に引渡されると書きましたが、

当時、千島列島は日本の領土。

 

じゃあ日本はヤルタ協定を結んだかというと、全く預り知らぬ所で結ばれました。

 

珍しいですが、こういうのがあるにはあるんです。

 

では第3国はどうしたらいいのかというと、

第3国に及ぶのが権利なのか義務なのかで分れます。

 

権利なら、明確に反対しない限り効力が及びます。

 

義務なら、明示に同意しない限り効力が及びません。

 

なので日本は、ヤルタ協定に日本が同意してないとして、日本は拘束されないとの政府見解を主張しています。

 

 

無効

 

条約は、結びさえすれば何でもかんでも有効になる訳ではなく、

無効になる場合もあります。

 

明確に国内法に違反して条約を結んだり、

同意に瑕疵があったりすると無効になります。

 

瑕疵ってのは傷とか欠陥とか過ちという意味ですね。

 

瑕疵には更に、錯誤、詐欺、買収があります。

 

が、実際には無知、無能、強欲を示してしまうので、余り主張されません。

 

それと、国家や国家代表個人へ強制があっても無効となります。

 

脅して結ばせた条約は無効なんですね。

 

 

解釈

 

条約の解釈の方法ですが、基本的な方法としては3つあります。

 

主観的解釈

 

当事者がどういう意思で決めたかを探ります。

 

その時の準備作業や過程の意思が重視されます。

 

客観的解釈

 

用語の通常の意味に従って解釈します。

 

条約文の文言が重視されます。

 

目的論的解釈

 

条約の全体的な目的にそって解釈します。

 

条約法条約では、「用語の通常の意味に従い、誠実に解釈する」とあり、

客観的解釈が基本となっています。

 

 

改正

 

条約の改正ですが、

2国間では両当事者の話合いで改正されます。

 

多国間では、2/3の賛成多数で改正されるのが多いです。

 

 

終了

 

条約にも当然、終りはあります。

 

無難な終り方として、合意での終了があります。

 

条約に終了規定があったり、

当事国の合意があると終了します。

 

合意以外での終了もあります。

 

重大な違反があった場合は終了できます。

 

多数国条約なら、違反した国を除名できます。

 

違反行為で特に影響を受けた国を「特別影響国」といいますが、

特別影響国は、違反国との間で単独で条約の運用停止ができます。

 

条約に不可欠なものが後になくなった場合も終了です。

 

これを「後発的履行不能」といいます。

 

島に関する条約だったのに、島そのものが水没した、とか。

 

但し、わざと履行不能にしたりすると、終了を援用できません。

 

終了したいが為に、悪気があってそんな事するのはダメです。

 

「事情の根本的変化」での終了もあります。

 

条約締結後に、予想外の疫病が流行した、とか。

 

「外交•領事関係の終了」で、条約も終了する事があります。

 

外交•領事関係の終了で直ちに条約が終了されはしませんが、

外交•領事関係が条約の不可欠の前提になってる場合は、条約も終了します。

 

「新しい強行規範の成立」でも終了します。

 

条約締結後に、新しい国際法上の強行規範ができると、

強行規範に抵触する条約は終了します。

 

終了理由をつらつら書きましたが、

合意があったりとか、重大な違反があったりとか、できないものはできないとか、

そういうのがあると終了になるんですね。

 

 

終りに

 

如何でしたか?

 

今回は条約そのものについて書きました。

 

「条約」っていう名詞自体はそれなりの認知度ですが、

深掘りするとなかなか奥が深いんですな!

 

留保とか解釈宣言とか、「そんなややこしくするな!」と言いたくなりますが、

国家側からすると、自分達の都合よく運用したいのであって、

勉強する側の気持ちなんか考えてくれませんからね!

 

今回も大分と端折りましたが、

この記事をきっかけに条約法を深く学習して頂けたらと思います!

 

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