戦争には3つの種類がある ニカラグア事件 わかりやすく
前回から、国際法に於る個別の事件や判例をご紹介しています。
国際法の個別の事件や判例は、挙げだすとキリがないので、
私が興味をもったものだけを紹介します。
今回ご紹介するのは「ニカラグア事件」
事件の経緯
中米に「ニカラグア」という国があります。
ニカラグアである時、政権交代がありました。
それまで親米政権でしたが、
反米の左翼政権が誕生します。
米国としては、この反米政権がどうも周辺国に社会主義をたきつけようとしてるんじゃないかと疑い始めます。
それが気に入らなかった米国は、まずニカラグアを空襲し、沿岸に機雷を敷設します。
それに留まらず、ニカラグアの反政府勢力「コントラ」を支援しだします。
具体的には、資金や武器の供与の他、訓練もしてます。
米国の支援を受けたコントラは、ニカラグアで破壊活動をします。
ニカラグアとしてはたまったものではありません。
そこでまず、国連の安全保障理事会に訴えますが、
安保理では米国が拒否権を発動し、この訴えは葬られました。
そこでニカラグアは国際司法裁判所に訴えます。
国際司法裁判所判決
国際司法裁判所は、まず米国の行為を3つに分類しました。
武力攻撃(Armed Atack)
英語も覚えて下さい。
日本語だと、漢字が似ていてややこしいので。
武力攻撃とは、
1.正規軍、又はそれに匹敵する位の武装勢力の派遣に
2.実質的に関与する
事です。
大規模な軍事力の行使の責任が国家に帰属するのを想定しています。
上記2要件を満たせば、自衛権により対抗できます。
より重大性の劣る武力の行使(Less Important Use of Force)
直接には軍事力を使わない、間接的な侵略を想定しています。
他国の反政府団体の武装化、訓練等です。
実際の攻撃には武装化や訓練した国が関与しないのが多いので、攻撃そのものに責任を負う場合は多くありません。
然しニカラグア事件では、武装化や訓練を仕組んだのは米国であり、その一連の行為に責任を負う、と判示されました。
これをされると、やられた限度で、武力行使を伴う対抗措置をとれます。
違法な干渉(Illegal Intervention)
他国の反政府勢力へ武器供与、資金援助、情報提供等です。
これをされると、武力を伴わない対抗措置でしか対抗できません。
武力行使禁止原則が規律するのは、「武力攻撃」と「より重大性の劣る武力の行使」です。
「違法な干渉」には武力行使禁止原則は規律せず、
不干渉義務が規律します。
日本国憲法への応用
ご存じの通り、日本国憲法では武力行使は禁止されています。
所がニカラグア事件の3分類を見ると、武力行使に当らない軍事活動があるのです。
これが、今の自衛隊の活動を考える上で非常に重要です。
しかも、自衛隊の海外派遣は、安保理の決定、又は受入国の同意があり、違法性もないです。
なので、日本国憲法上も合憲である軍事活動があるとの解釈が可能になります。
これを分っていない憲法学者も多いんじゃないでしょうか!?
憲法、特に9条を語る時、武力行使と軍事活動はイコールで語られるのが多いですが、
国際法的には実は違うんですね。
学び
如何でしたか?
今回はニカラグア事件について書きました。
事件そのものはともかく、学びとしては、
1.軍事活動には3つの種類がある
2.日本国憲法のいう「武力行使」に該当しない軍事活動もある
というのがありました。
国際法を勉強する事によって、憲法がほしかった答を学習できるのは意外でした。
視野を広げるって大切ですね!
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