国際法主体とは
さて、国際法解説の第3段!!
今回は、「国際法」という ‘物語’ の登場人物、
言い換えれば国際法は誰の為の法かを考えたいです。
「法」という ‘物語’ に出演できる資格
物語への出演という例えで返って分り難かったら申し訳ないのですが、
法によって権利を得たり縛られたりする対象は、各法毎に決っています。
法的に権利を得たり義務を負ったりするのを、
「権利能力を有する」といいます。
堅苦しいですね。
そして国際法上、’権利能力を有する’ 対象を「国際法主体」といいます。
これからみていくのは、詰る所、国際法上権利能力を有する国際法主体は何か、であります。
国
国際法は国と国との関係を規律する法です。
よって、国際法の主要な登場人物は国、
要するに各国の為の法です。
当然ですね!
そこで今更ですが、
‘国’ とは何ぞや!?
何をもって ‘国’ といえるのでしょうか?
一般的に、国たる要件は以下です。
- 住民
- 領土
- 政府
- 外交能力
まず「住民」ですが、
これも何をもって ‘住民’ とするかで、「主観説」と「客観説」の2つの考え方があります。
主観説は、その人達の意思(何国籍を持ってるか)
客観説は、人種,言語,宗教等で決めましょう
という考え方。
通説は主観説です。
客観説だと、他民族国家、即ち1つの国に沢山の民族がある国をばらばらにしなきゃいけないし、
自分達の民族がよその国にいる場合、それを口実に「あそこの国も俺達の国」と侵略を正当化しかねません。
実際、歴史的にはナチス•ドイツがその理屈でオーストリアを併合してますし。
領土については、これ当然ですよね!
場所がないんだったら、どやって地図ひくんだ、って話ですし。
領土が国の要件になってるので、国の事を「領土団体」とよんだりもします。
こんなの国際法でも滅多に使わない表現ですが、
一応あるにはある表現なので、ご参考までに。
「政府」っていうのは、ここでは領土と住民を支配できる体制をいいます。
「ちゃんと国として纏まれる体制を作ってますか!?」という点ですね。
外交能力とは、よその国に頼らず自分で外交できる力をいいます。
これに関しては例外があって、
米国やロシア等は、大きい国の中に小ちゃい国があります。
(米国では1つ1つの国を「州」といいます)
これら1つ1つの国にまで外交能力がいるのかというと、それは違いまして、
1つ1つを纏める大きな国に外交能力があれば十分です。
昔は「従属国」というのもあって、併合される途中過程なのですが、
今はどっかの国の外交権を奪うのは国際法違反ですので、「昔こんなのあったんだ〜」位を知っとけばいいでしょう。
国以外に国際法上権利と義務を負う者
国は国際法の ‘主人公’ ともいうべき存在ですから、
文句なく国際法上の権利能力を持っています。
先程、国際法主体の話をしましたが、
国は「生得的法主体」といって、国際法上の権利義務をフルで受けます。
では国家以外に国際法上権利能力を有するものはあるんでしょうか!?
実はあります。
但し国よりも権利能力が制限されるので、こうした存在は国際法の「派生的主体」とされます。
準国家団体
交戦団体、亡命政府、民族解放団体
の3つがあります。
準国家団体として纏めては説明し辛いので、
ばらばらで説明しますね。
交戦団体
ある国の中で反乱を起こしてる団体です。
全ての反乱団体が交戦団体になれる訳ではなく、
その反乱団体が相当な広さを支配していて、よその国の保護を図る必要がある場合に認められます。
誰が認めるのかというと、
反乱されてる国の政府、又は保護されるべきよその国です。
交戦団体承認すれば、
その国の政府としては、反乱団体の支配地域の外国人の保護責任を反乱団体に押付けれますし、
外国としても、反乱団体の支配地域にいる自国民の保護なんかは、正統政府はあてにできませんしね。
正統政府が交戦団体承認すれば、戦時国際法が適用されます。
平たくいえば、国同士の戦争と、法的に同じになります。
外国が交戦団体承認すれば、その外国と反乱団体は中立法の適用を受け、中立国の権利侵害すれば
(その外国が正統政府とも貿易してたりするので、その外国の貿易船を攻撃する、とか)
1反乱団体にも関わらず、一定の国家責任を負います。
実際は、正統政府が、自分の統治力がないのを認める結果になるので、
それを嫌がって、交戦団体承認する事例はまずありません。
1800年代の米国の南北戦争を最後に形骸化してしまってるので、
長々書いといてなんなんですが、そこまで覚える必要はないでしょう(苦笑)
亡命政府
政府が外国に逃げたものです。
自国をまともに統治できてないにも関わらず、国際法上の権利能力が認められます。
一方で、なかなか認められる代物ではなく、
- 新しい政府がその国に存在してる
- 亡命政府を受入れた国が、後に新しい政府を承認した
(=亡命政府を見捨てた)
- 政府とはいえない抵抗組織
は国際法上、’亡命政府’ とは扱われません。
しかも、政府として仕事するには、受入国の同意と協力が必要です。
(だからこそ、見捨てられてしまえば亡命政府とは認められない)
亡命政府として認められると、交戦国としての国際法上の権利がえられます。
亡命政府は、祖国と喧嘩しないと発生しませんから、
紛争に関しての国際法上の権利を与えれば十分です。
民族解放団体
植民地、外国の占領、人種差別
から祖国を解放する為に戦ってる団体です。
自決権、即ち「自分達の民族で自分達の国を造る」に基づいて結成されます。
交戦団体や亡命政府は、特定の第3国が恩恵的に認めますが、
自決権という国際社会の一般理念に基づき認められる点で、反体制側には有利な団体です。
平時には
- 条約締結権
- 国際組織のオブザーバー(参加できるけど発言できない)
戦時には
- 戦闘員の捕虜資格
が認められます。
ばかになんないのは捕虜資格ですね。
国の中で反乱してるって、普通は内乱罪って、刑法犯ですから、
犯罪者として裁かれるのか、国際法上の捕虜になるかは天と地程の差があります。
国際組織
まず最初、大前提として勘違いしないでほしいのが、
国際法でいう所の国際組織は、構成員が国である、という点。
一般的に、国際組織というと、
NGOだの、国境なき何とかだの、
思いうかぶかもしれませんが、それらは一般的には正しいですが、
国際法の世界ではそれらは国際組織には勘定しないんですね。
で、この国際組織、
国の集まりである以上、当然、国際法上の権利能力はあるのかと思いきや、
実はその辺が国際法上曖昧なんですね。
通常は「設立基本条約」という条約を結んで、国際組織の権利能力を決めます。
国際組織は、何らかの目的があって徒党を組んでますから、
その目的にあわない権利能力、権利だけならともかく義務まで負ったって得ないですから。
個人
国際法はあくまで、国と国との関係を規律する法なので、
個人どうこうは、本来は議題に登りません。
が、条約や国際機関の手続き等で、議題になるのが時々あります。
「うちの国民の人権を制限しやがって」みたいなのが最たる例ですね。
他には、重大な国際犯罪を犯した個人を裁く「国際刑事裁判所」という裁判所が、2002年に設立されました。
重大犯罪というのは、集団虐殺とか戦争犯罪とか、それ級の犯罪です。
ただ、先程も書いた通り、大体は条約によって「お互いの国民の権利の、これとこれは守りましょう」って書かれてる場合が多く、
結局は副産物的に規定されてるにすぎないので、国際法主体とはいい難いのです。
纏め
如何でしたか?
国際法の登場人物、即ち国際法主体には
まず国、
それ以外には
交戦団体、亡命政府、民族解放団体、国際組織
があって、
個人は原則、国際法主体にはならない
というのが纏めでしょうか!?
上記はあくまで入門編です。
他にも論点は幾つもあるんですが、
書きすぎると返ってややこしくなるので、今回はとばしてます。
ご要望があれば書いていこうかと思いますので、