国際法上の承継とは
引継ぎってなかなかの一大事ですよね。
職場だと、引受ける方は仕事が増えるし、
引継がす方はその職場を去るんですから、転職にせよ転勤にせよ配置転換にせよ、かなり大きな変化であるのは間違いありません。
これが相続になってくると、そもそも人が死んでるってだけで大事ですし、
遺産の取り分を巡って身内が大揉めするのも珍しくありません。
サスペンス番組でも、発端が遺産争いであるのはよくありますしね。
民間でも引継ぎは大変ですが、
これが国となると、法的にも論点多彩なんです。
国の引継ぎを国際法用語で「承継」といいます。
今記事では、そんな国の引継ぎである「承継」を解説しましょう!
国の引継ぎである「承継」とは
先程も書きましたが、
承継とは新しい国が、古い国を引継ぐ事です。
正確には、
- 新しい国が古い国を引継ぐ「国家承継」
- 新しい政府が古い政府を引継ぐ「政府承継」
の2種類に大別されます。
順番に見ていきましょう!
国家承継
先の段落で書いた通り、
新しい国が古い国を引継ぐ事です。
何を承継するのかというと、国際法上の権利義務です。
即ち
条約、国際組織の加盟資格、財産や債務、国家文書、
等です。
何が原因でこんなのが起こるのかというと、
- 独立
- 複数の国が合体する「結合」
- 領域の一部が切離され、他国に移転する「分離」
- 古い国が消滅し、複数の新国家が誕生する「分裂」
があげられます。
古い国が消えてなくなる以外にも承継が発生する時があります。
これが民法上の相続との違いですね。
相続っていうのは、人が死んでからでないと発生しませんから。
承継に関してはその決まりを定めた
「条約国家承継条約」
「国家財産等承継条約」
が、あるにはあります。
然しいずれも締約国が少なく、失敗とみられています。
条約の承継
条約が承継されるかどうかは、
新しい国が独立によって誕生したのか、
それ以外で誕生したのかで全然違ってきます。
独立でできた国では、
クリーン•スレート原則といって、新しい国は宗主国(独立前にその国を支配してた国)の権利義務を負わなくていいという原則が、あるにはあります。
独立って、往々にして植民地にされてたのを、漸く自分達の国を持てたってパターンが多いので、
何で今まで自分達を支配してた輩の、権利はともかく業務まで背負わなきゃいけねーんだ! っていう気持ちは理解できますしね。
一応、宗主国の権利義務を、負いたけりゃ負ってもいいんですよ。
そこは独立国の選択ですから。
まあ、うぷ主が独立国の王だったら、宗主国の権利義務なんて一切合切ポイ捨てしますが(爆笑)
但し境界確定は別ね。
独立を機に「あっちもこっちも我が国の領土!」っていうのは、当然認められませんよ!
後、クリーン•スレート原則は国際慣習法にはなってないらしいので、その点ご注意!
‘原則’ といいつつ、ではあるんですが…
では独立以外の場合ではどうでしょう?
独立以外だと、「継続性の原則」又は「自動的承継の原則」といって、
大体は新しい国は前の国の権利義務を承継しますね。
原則といいつつ、継続性の原則も国際慣習法にはなってません。
結合では、どっちの国の何をどれだけ承継するのか?
分離や分裂では、どの国が古い国の権利義務を承継するのか?
こういったのは、「つど話合いで決めて下さい🤍」ってなってるらしいんです。
結局は話合え! っていうんだから、あってない様な慣習法じゃないですか!
国家財産の承継
まず国家財産とは何でしょうか?
国家財産とは、国がその国内法に従ってもってる財産や権利利益です。
国有地とかね。
どの国が承継するのかは、基本、合意で決めます。
結局は話合いです。
国家文書の承継
行政文書や歴史文書等、国内法に則って管理された公的な文書を「国家文書」といいます。
これは比較的サラッと承継されます。
文書ですから、複製すれば取合いにならないですしね。
国家債務の承継
国家債務とは、要は国が借金してるんですね。
金が絡む以上、承継に際してどの国がどれだけの債務を負うのか気になる所。
分離、分裂であれば、’衡平な割合で’ 承継国に移転されるんだそう。
意味深ですね(笑)
独立ならば、クリーン•スレート原則、
詰り原則承継されません。
先程も申上げましたが、
勝手に支配しといて、「独立するんなら借金は夜露死苦!」とか、
「ふざけんな💢」でしょ!
もっとも何らかの合意があるならクリーン•スレート原則よりも合意優先ですよ。
只、合意優先といいつつ、「天然資源の永久主権」は侵してはなりません。
「天然資源の永久主権」とは、その国にある資源の権限はその国が持つ、というもの。
詰り、嘗て支配していた国が、
「借金はチャラにする代り、資源は俺達の好き放題させて貰う」
はダメです。
当り前ですね!
他には「私権」というのもあるらしいのですが、
習わなかったのでとばします。
政府承継
承認と同じく、承継にも国家承継と政府承継があります。
同じ国の中で政府が交代した時、旧政府の権利義務を新政府が引継ぐ事です。
想定されるのは、例えばロシア帝国がソビエト連邦に変わるとか、江戸幕府が明治政府に変わるとか、
その位の大きさです。
野党が与党になる政権交代程度なら、政府承継を問題にせずとも権利義務を引継いでくれますから。
前の政府の法的な権利義務は全て、新しい政府に承継されます。
「江戸幕府が締結した条約なんか知りませんよ!」は無責任すぎますし、
その無責任さを口実に、戦争して植民地を拡大する、というもの無秩序ですし。
ここで、新しい政府と古い政府の両方が存在してると、ややこしくなります。
中国の北京政府と台湾政府が最たる例。
光華寮事件という判例があります。
京都大学の近くにあった、光華寮という中国人の寮についてです。
台湾が日本法に従って所有権移転登記しました。
所が、大陸支持派の学生が暴れたらしいんですね。
そこで、台湾が大陸支持派の学生の立退を京都地裁に提訴します。
その途中、日中共同声明により、日本は北京政府を正式な中国政府とします。
そして台湾との外交関係を修了します。
逆に、それまでは台湾を正式な中国としていたんですね。
そこで問題は、日本から見た正式な中国政府が台湾→北京になったとして、それがこの裁判にどんな影響を与えるか、です。
京都地裁は、1977年に「正式な中国が台湾→北京になったんだから、中国の寮である光華寮も北京側の寮だろ」
としました。
機械的な判断ですね。
所が、1987年の差戻し大阪高裁判決で、
…てか、何で京都地裁の判決から十年も掛ってんだ!? って話ですが、
「台湾に旧政府が残ってる以上、中国大陸にある寮ならまだしも、ある物件ならまだしも、日本にある物件まで、そんな不完全な承継の対象にはならない」
と判示しました。
そっから更に20年たった2007年、最高裁が
「日中共同声明で正式な中国が台湾→北京になったんだから、この裁判がそもそも違法で無効」
と判示しました。
この最高裁判決は批判されています。
だって、こんな機械的な判決を下すのに20年も要ります!?
結果的には不完全な承継であったとしても、承継されるとなりましたが、
その判決に至る、過程もブレブレですし、時間も掛りすぎです。
不完全承継に於て、外国にある財産の承継は、まだまだ国際法の原則が定まってるとはいい難いです。
纏め
如何でしたか!?
纏めると、
①
承継とは、新しい国や政府が、古い国や政府から権利義務を引継ぐ事
②
独立では承継は起きないのが多いが、それ以外では承継は基本は発生する
③
新しい政府と古い政府が両方あると、第3国にある財産の承継の国際法は確立していない
この位を抑えとけば教養として十分じゃないでしょうか!?
例によって、分り易くする為、内容を自分なりに単純化しました。
今記事ではそんなにないですが、
より深掘りしたいなら、YouTube動画のコメントを通じてご要望下さい!!!
ご要望が多ければ、より深掘りした解説するかもしれません。
(しないかもしれませんが(笑))