国際人権法を分かりやすく解説 -世界人権宣言・国際人権規約・人民自決権-

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国際人権法を分かりやすく解説 -世界人権宣言・国際人権規約・人民自決権-

 

人権ってとても大切ですよね。

 

‘人権’ なんてたいそうな表現じゃなくとも、

大切に扱われるのは幸せなんじゃないでしょうか。

 

人権の大切さは身近なのばかりではなく、

国際法の世界でも同じです。

 

かつてナチスがユダヤ人迫害を行ったのは有名ですが、

人権侵害を放置すると重大な国際問題を誘発しかねないという過去の反省もあります。

 

そういう経緯もあり、特に戦後、国際法は人権を守る為に色々してきました。

 

今回は人権を守る為の国際法、「国際人権法」について書きます。

 

 

国連憲章と世界人権宣言

 

国連憲章とは、国際連合の設立根拠となる条約です。

 

なので基本的には国連のルールが書いてあります。

 

その中でも「人権を守りましょう」っていう条項も、あるにはあります。

 

そして世界人権宣言ですが、1948年に採択されました。

 

国連初の人権に関する法原則宣言として有名です。

 

然し、国連憲章にしろ、世界人権宣言にしろ、

総花的な内容しか書いてません。

 

「人権を守りましょう!」丸!

みたいな。

 

これだけでは正直、実効性のある規定とはいい難いです。

 

 

国際人権規約

 

そこで出てきた条約が「国際人権規約」です。

 

「この権利は、こういう風にして守りなさい」という内容が、細かく規定されています。

 

国際人権規約は更に、

  • A規約
  • B規約
  • 第1選択議定書
  • 第2選択議定書

に、大きくわかれます。

 

A規約は社会権、B規約は自由権について書かれています。

 

ABで自由権→社会権の順かと思いきや、逆なんですね。

 

B規約については、国際的な監視がしっかりしています。

 

第1選択議定書は、B規約を守らせる為の議定書です。

 

具体的にどんな制度があるのかというと、「個人通報制度」という制度があります。

 

個人通報制度とは、人権侵害された個人が、「B規約人権委員会」という機関に訴えられる制度です。

 

本来であればその国がきちんと人権を守らないといけないのですが、

それが機能してない時に利用できます。

 

訴えがあると、B規約人権委員会は検討し、訴えがあった国に見解を出します。

 

残念ながら、この「見解」には、拘束力がありません。

 

詰り、その国が踏倒せばそれまでなのです。

 

但し、国連総会にも提出されて公開されるので、

それ相応の圧力にはなります。

 

一方、A規約はというと、

「最大限の努力をしましょう!」っていうのに留まっています。

 

努力をすればそれでいいんですね。

 

何でこんな違うのかというと、

自由というのは、権力者が余計な事をしなければ基本的には実現します。

 

もっというと、放っときゃいいのです。

 

なので、実現は割に簡単なのです。

 

一方、社会権とは、ざっくりいえば国に助けてもらう権利。

 

健康保健とか生活保護とか…

 

国側の積極的な行動が必要ですし、お金も掛ります。

 

各国によって経済力等はまちまちですので、

一律に「ここまで守れ」というのは、社会権については厳しいのです。

 

だからこんなに差が出ます。

 

第2選択議定書ですが、

別名「死刑廃止条約」ともいいます。

 

名前の通り、死刑を廃止する為の議定書です。

 

上記4つは、それぞれの批准となります。

 

国際人権規約を締結したからといって、4ついっぺんに批准するんじゃありません。

 

日本はA規約とB規約だけ批准しています。

 

日本には死刑があるから、第2選択議定書は批准してませんが、

第1選択議定書も批准してません。

 

ちょっと意外ですね。

 

 

個別条約•地域条約

 

国際人権規約は人権に関する一般的な条約ですが、

対象や地域を絞った条約もあります。

 

拷問についてを禁止する、その名も「拷問禁止条約」

労働者の権利を守る「ILO憲章」

女性への差別を撤廃する「女子差別撤廃条約」

大量虐殺を禁止する「ジェノサイド条約」

等。

 

場所を絞った地域条約としては

欧州人権条約

米州人権条約

アフリカ•バンジュール憲章

等。

 

中でも欧州人権条約では「欧州人権裁判所」(ECHR)、

米州人権条約では「米州人権裁判所」(IACHR)という裁判所があり、

締約国の個人が訴えれます。

 

更に、欧州人権裁判所の判決には拘束力があります。

 

国際人権規約の個人通報制度には拘束力がなかったのと比べると、

踏込んでますね!

 

 

人権を巡る対立

 

人権は、実は国際的には対立の要因です。

 

対立の軸は、大きく価値観と程度です。

 

価値観の対立として、

西欧普遍主義 – 文化相対主義

の対立があります。

 

西欧普遍主義とは、人権とか民主主義とかっていうのは、あまねく全ての国に当てはまる普遍的な価値とする考えです。

 

対して、文化相対主義とは、

簡単にいえば「人それぞれ」

…もっというと「’国’ それぞれ」!

 

文化相対主義は、中国、マレーシア、イスラム諸国が主に主張します。

 

これが難しいんですよね。

 

確かに全てが全て西欧が正しいとは限らないでしょ!

 

かといって人権の抑圧も「国それぞれ」といっていいのか?という問題ですよね。

 

この対立はそう簡単に解決しません。

 

程度の対立というのは、主に南米が主張してるんですが、

「経済が発展したら人権を守ります」という事です。

 

特に社会権は、国が積極的に助けなきゃいけないんだから、

金が掛ります。

 

「現状それだけの財政負担はできません」というんですね。

 

文化相対主義との違いは、人権の価値それ自体は西欧普遍主義に同調的だという事です。

 

程度の問題というか、能力の問題というべきかもしれません。

 

 

人民自決権

 

「自決」って多義語ですね。

 

「自殺」という意味もありますが、

ここでいう ‘自決’ とは、「自分達の事は自分達で決める」という意味です。

 

‘自’ 分で ‘決’ めるから ‘自決’ ですね。

 

分り易いです。

 

自決権ですが、大きく分けて「外的自決」と「内的自決」があります。

 

外的自決は外国の支配からの解放、

内的自決は政治的な意思決定の自由

です。

 

内的自決は、どちらかといえば参政権ですね。

 

第1次世界大戦後、ウィルソンが「無併合、無賠償、民族自決」を謳いましたが、

ウィルソンが謳った民族自決は、どちらかといえば内的自決です。

 

一方でソ連を建国したレーニンも「抑圧された人の解放」を謳っており、

こちらは外的自決に当ります。

 

第1次世界大戦後に民族自決は、ある程度は認められ、

東欧諸国が独立していきました。

 

一方でアジア•アフリカ諸国への民族自決は、この時は認められませんでした。

 

第2次世界大戦後になって、国連憲章で人民自決権が謳われ、

国連総会でも植民地を独立させる動きがあったりして、

漸く世界に広がっていきました。

 

現在、人民自決は、植民地が解放された事で、役割をほぼ終えたといっていいでしょう。

 

植民地の解放は、主に外的自決で、内的自決である参政権の問題はまだまだ残っていますが、

政治体制の問題は基本的には国内の話であって、国際法は入り辛いのです。

 

寧ろ民族自決は、アジア•アフリカの内戦を助長しちゃってる側面があります。

 

1国の中で違う民族同士が「民族自決だ!」って、お互い言い合って争ってるんですね。

 

もう21世紀になって久しいですし、

これからは新たな人民自決権を考えるべきじゃないでしょうか!?

 

 

纏め

 

如何でしたか?

 

今回は国際人権法について書きました。

 

纏めると、

 

人権は元々は国内問題であるが、

放置すると重大な国際問題に発展する恐れがあり、国際法が規律するに至った。

 

人権を巡る条約には

国連憲章、世界人権宣言、国際人権規約、その他地域条約や個別条約がある。

 

国際人権規約には社会権を規定したA規約、自由権を規定したB規約、個人通報制度を規定した第1選択議定書、死刑廃止を規定した第2選択議定書、がある。

 

人権を普遍の価値とする西欧普遍主義と、

国それぞれとする文化相対主義や、経済•社会的発展による程度問題を主張する考えが対立してる。

 

人民自決権は

1.外的自決は外国の支配からの解放

2.内的自決は政治的な意思決定の自由

があるが、主には外的自決をさす。

 

でしょうか。

 

元々は国内問題だったのを国際法が規律するのは、相応の難しさがあるんでしょうが、

世界中の人、1人1人が幸せになればな、と祈ってやみません。

 

今回も、いつもながら話をややこしくしない為に端折って説明しています。

 

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